海外旅行の飛行機のトイレについて「どうなってるの?」と気になったことはないでしょうか。機内のトイレは循環式・バキューム式の2つの構造・仕組みがあり、旧型か新型かによって原理が変わります。昔は汚物処理として空中散布していた時代もあったそうで……。
今回は海外旅行で乗る飛行機のトイレの構造と仕組みを解説します。併せて昔の汚物処理と空中散布の歴史も説明します。加えてトイレに搭載されているものもまとめるので、海外旅行の移動にお役立てください。
飛行機のトイレ……確かになんであんな「シュゴォ!」って音が鳴るのか気になる。
この記事では「海外旅行で乗る飛行機のトイレの構造と仕組み」「昔の汚物処理と空中散布の歴史」をまとめるよ!
1.海外旅行で乗る飛行機のトイレの構造と仕組み
まずは海外旅行で乗る飛行機のトイレの構造と仕組みを見ていきましょう。
1-1.飛行機のトイレの構造
飛行機に設置されているトイレの構造は、次の2つが一般的です。
- 循環式(水洗式):水力で処理するタイプ
- バキューム式(真空式):吸引力で処理するタイプ
飛行機トイレには主に循環式とバキューム式の2種類があり、どちらも汚物を素早く処理できる構造となっています。ただ、世代により「旧世代:循環式」「新世代:バキューム式」と区別されるので注意しなければなりません。
1-1-1.循環式(水洗式)
循環式のトイレは水力によって排泄物を処理する旧型タイプで、以下3つの特徴があります。
- 水力で処理する
- 何度も大量の同じ水で洗浄する
- タンクが個別で下方に設置されている
以上のように循環式は「何度も大量の同じ水で洗浄すること」「タンクが個別で下方に設置されていること」が特徴と言えるでしょう。
循環式(水洗式)のトイレは毎回備え付けのタンクを大量の水が行き来することで洗浄されます。その際に使用後の水が一度タンクに貯水され、ろ過装置を通過して再びトイレへと戻る構造です。
ただ、上空で何度も使用することで水が汚れるため、かつては相当な悪臭だったそうで乗客からの苦情も絶えませんでした。そんな事情から、新しい方式が開発されるに至ったのだとか。
1-1-2.バキューム式(真空式)
バキューム式のトイレは吸引力によって排泄物を処理する新型タイプで、以下3つの特徴があります。
- 吸引力で処理する
- 空気と少量の新しい水で洗浄する
- タンクが一緒に後方に設置されている
以上のようにバキューム式は「空気と少量の新しい水で洗浄すること」「タンクが一緒に後方に設置されていること」が特徴と言えるでしょう。
バキューム式(真空式)のトイレは1回あたり約200CC(コップ約1杯分)の少量の水で洗浄可能です。これは飛行機が高度1万mという特殊な環境にあるからこそのもので、気圧差を利用してトイレを流す構造となっています。
飛行機は高度が高ければ高いほど内と外で気圧差が発生し、空気の流れが生じます。その時、気圧が「高い方⇒低い方」へと流れる性質を利用して排泄物をタンクへと吸引することで、一瞬で汚物を処理しているわけです。
よく飛行機事故の再現VTRで「窓やドアが吹き飛んで放り出された!」という様子が描かれますが、あれも気圧差によって吸い出される原理が働いています。
1-2.飛行機のトイレの仕組み
飛行機に設置されているトイレの仕組みは、次の1つが基本的です。
- 排泄物を洗浄⇒タンクに貯蔵⇒ラバトリーカーで回収
機内のトイレは「上空で出た排泄物を一度タンクに溜め込み、地上で再度ラバトリーカーで汲み取る」仕組みとなります。昔は汚物処理として空に空中散布していたそうですが、衛生面や倫理面の観点から問題があるということで今のような形に落ち着いたようです。
ちなみに、あの「シュゴォ!」という音の正体はトイレとタンクを繋ぐ配管を時速200kmで排泄物が駆け抜けていく音なのだとか。
なお、気圧差のない陸地では排泄物が吸い出せないため、バキュームブロアという機械(人工的に気圧差を生み出す機械で掃除機を巨大化したようなもの)で処理しているとのことです。
今の飛行機はバキューム式が主流だけど、かつては循環式が主流だったみたい!
現代の機内のトイレは快適に過ごせるけど、数十年前は相当酷かったって話もあるよね。
2.飛行機のトイレに搭載されているもの
次に飛行機のトイレに搭載されているものを見ていきましょう。
- 排泄に必要な設備
- 排泄物を流すための水
- ウォシュレットの有無
- シートベルトの有無
- 灰皿の有無
ここでは排泄に必要な設備や排泄物を流すための水など、飛行機のトイレに搭載されているものの他、ウォシュレット・シートベルト・灰皿の有無についても解説するので併せてご確認ください。
2-1.排泄に必要な設備
飛行機のトイレには、排泄に必要な設備が揃っています。
- 照明
- 便器
- トイレットペーパー
- リフレッシュボタン
- ベビーベッド
- 鏡
- 蛇口
- 石鹸
- 洗面台
- 紙コップ
- ゴミ箱
機内のトイレに搭載されているものは、街中で見かける公衆トイレとほぼ同等の設備です。
ただし、1つのトイレですべて完結できるよう照明をはじめ便器やトイレットペーパーやリフレッシュボタンの他、ベビーベッドをはじめ鏡や蛇口、石鹸や洗面台、紙コップやゴミ箱まで完備されています。
使用する際はマナーを守り、他の乗客の迷惑にならないよう綺麗な状態を保ちましょう。
2-2.排泄物を流すための水
飛行機のトイレには、排泄物を流すための水も載せられています。
通常、旅客機は「国内線で約400L」「国際線で約1,200L」の水を積んで飛行するとされ、限られた水量で機内すべての水を賄っています。浴槽に張るお湯の量が約200Lと考えると、国内線はお風呂2杯分、国際線でもお風呂6杯分しか積んでいない計算です。
機内のトイレはその積載した水の一部を利用しており、1回の洗浄で約200CC(コップ約1杯分)が使用されるため、乗客は否が応でも節水を意識せざるを得ません。
2-3.ウォシュレットの有無
座席がビジネスクラスやファーストクラスの場合、各クラス専用のトイレにウォシュレットが完備されていることがあります。ただし、エコノミークラスの場合、ウォシュレットがないことがほとんどです。
2-4.シートベルトの有無
座席に限らず、各クラス専用のトイレにシートベルトは完備されていません。
2-5.灰皿の有無
飛行機のトイレには灰皿がありますが、喫煙は禁止されています。トイレに限らず機内は全面禁煙、いついかなる場合であっても喫煙は禁止です。
機内のトイレの備品は在庫切れになることもあるから気を付けたいね!
乗客全員が利用するからすぐになくなっちゃうことも……でも、その場合はキャビンアテンダントに伝えると補充してくれるよ!
3.昔の汚物処理と空中散布の歴史
最後に昔の汚物処理と空中散布の歴史についてまとめます。
- 1920年代:放出式のトイレ
- 1930年代:循環式(水洗式)のトイレ
- 1980年代:バキューム式(真空式)のトイレ
大型の旅客機が製造された1920年代、機内のトイレは機体の床に穴を開けた簡素なものでした。
当時は空から放出するタイプで、飛行機の飛行速度を考えると落下中に分解されると考えられていました。イメージとしては大気圏で燃え尽きるロケットの残骸のような感じだったのかも!
その後の1930年代、循環式のトイレが開発されました。
ただし、旅客機は国内線で約400L程度、国際線で約1,200L程度の水しか積めないため、当時はまだまだ非効率だったそうです。中にはタンクが漏れることもあり、空で凍った排泄物が溶けて民家に落ちることもあったという記録まで残っています。
そして1980年代、初めて現在の形に近いバキューム式のトイレが導入されました。このような歴史を経たことで大幅に水を節約できるようになり、現在の形が主流となりました。
空から“落とし物”が降り注ぐ……そんな世紀末みたいな時代があったんだ!
さすがに落下中に霧散するから大丈夫だけど、考えたらゾッとするよね!
4.まとめ
今回は海外旅行で乗る飛行機のトイレの構造と仕組み、昔の汚物処理と空中散布の歴史をまとめました。
海外旅行の飛行機に搭載されたトイレは、普段使用するトイレとは異なる構造・仕組みです。機内のトイレには循環式とバキューム式があり、昔は循環式だったものの今はバキューム式が主流となっています。
「昔の汚物処理は空中散布だった」なんて時代もありますが、今は瞬時に排泄物を処理できる方法が確立されたこともあり、快適に用を足せるはず。ただし、改良されたとはいえ乗客が綺麗に使わないとすぐに汚れてしまうため、清潔に利用することを心がけましょう!