海外旅行で食事の挨拶をすると外国の方から不思議そうな目で見られることがあります。食事の挨拶は日本だけの文化とされており、外国では食前食後の祈りが主流だからか、不思議な光景に映るのかもしれません。中には何も言わない国もあるなど、世界の食文化はまさに三者三様です。
今回は海外旅行の食事の挨拶は日本だけなのかを解説します。併せて食事の挨拶の語源・食前食後の祈りの由来も説明します。加えて外国の祈り以外の合図もまとめるので、海外旅行の飲食にお役立てください。
日本では「いただきます」「ごちそうさまでした」と手を合わせるのが当たり前だけど、外国では別!
この記事では「海外旅行の食事の挨拶は日本だけなのか」「食事の挨拶の語源・食前食後の祈りの由来」をまとめるよ!
1.海外旅行の食事の挨拶は日本だけ?
まずは海外旅行の食事の挨拶は日本だけなのかを見ていきましょう。
海外で食事する際「いただきます」や「ごちそうさまでした」を言うか迷ってしまうことがあるのではないでしょうか。日本では食事の時に挨拶するのが慣習ですが、外国では食前食後に祈るのが習慣とされています。敬虔な信者の方ほどその傾向が見られます。
どちらも食への感謝を表すという点で共通しているのかもしれません。
現に「生きていくために命をいただく」という気持ちが根付いている国ほど、1日1日を生きられることに対して感謝を述べるのが礼儀とされるわけです。そこは日本だろうと外国だろうと関係ありません。
ただ、この感謝の形が「日本=挨拶」「外国=祈り」となっているのです。例外もありますが、世界を見渡しても食事の挨拶をする国はあまりないのが現状……一部の国では食べ物・飲み物に対して祈る姿が見られますが、限られた文化圏にとどまります。
日本のように「いただきます」「ごちそうさまでした」と口にするのは、世界でも稀と言えるでしょう。
外国の食文化にはいつも驚かされる……挨拶や祈りもそう!
食に対する感謝は世界中どの国にいたとしても忘れてはならないってことさ!
2.食事の挨拶の語源
次に食事の挨拶の語源を見ていきましょう。
世界中を見渡しても食事の挨拶をするのは日本だけとされています。食前食後に祈る国もあることはあるのですが、日本のように手を合わせて挨拶する国は珍しいです。
- 食前:「いただきます」
- 食後:「ごちそうさまでした」
- 作り手:「おそまつさまでした」
日本では食前に「いただきます」、食後に「ごちそうさまでした」と言うのが作法です。それに対して作り手が「おそまつさまでした」と答えて、一連の食事が終了となります。
食事の挨拶は食育の観点から重視されており、日本では生産者や料理人など作ってくれた人への感謝として挨拶するのが礼儀です。こうした食事の挨拶は、大正時代~昭和時代にかけて根付いたものとされています。
2-1.「いただきます」の語源
「いただきます」は食前に感謝を込めて言う言葉です。
「いただく」は漢字で「頂く・戴く」と書き、もともと頭上に掲げる動作や眼前に捧げる所作を表していました。かつては、上流階級からもらった品物を頭に置く様子や神仏へのお供え物を頭に乗せる様子も指していたとされています。
転じて「食べる」「飲む」の謙譲語として「いただく」が使用されるようになったそうです。それが次第に「いただきます」へと変化し、大正時代~昭和時代にかけて一般家庭にも定着。今では肉類・魚類・野菜類・果物類など「命」はもちろん、生産者・料理人に対する感謝の言葉として使用されています。
2-2.「ごちそうさまでした」の語源
「ごちそうさまでした」は食後に感謝を込めて言う言葉です。
「ちそう」は漢字で「馳走」と書き、もともと駆け回ることや奔走することを表していました。かつては、お客様をもてなすにあたって品物を揃えるために古今東西に馬を走らせることも指していたとされています。
転じて「豪華な料理」「贅沢な料理」の代名詞として「馳走」が使用されるようになったようです。そこに畏敬の念を意味する「御」「様」がついて「ごちそうさまでした」へと変化し、大正時代~昭和時代にかけて一般家庭にも普及。昔は材料1つ調達するだけでも一苦労だったからこそ、神様・食材に対する感謝の言葉として使用されるようになったと言えます。
2-3.「おそまつさまでした」の語源
「おそまつさまでした」は自分が提供した料理に対して謙遜を込めて言う言葉です。
「いただきます」「ごちそうさまでした」に対するへりくだった表現として使用されます。
もともとは「大した料理ではないですが……」という謙虚さから生まれた言葉で、日本に古くから伝わる謙遜の意味合いから「おつまつさまでした」が定着したとされています。つまり、作り手が恩着せがましいと勘違いされたくないがために口にするようになった言葉だったわけです。
2-4.注文の確認としての「お通し」
余談ですが、居酒屋の「お通し」も日本独自の文化とされています。お通しは、注文を受けてから料理が出せるまでの場繋ぎとして提供する酒菜のことです。
かつてお通しは「注文を了解した証」として提供されていたのですが、次第に「注文を通した」という意味からお通しと呼ばれるようになった……つまり、日本人の“おもてなしの心”が詰まったものと言えるでしょう。
日本人としてちゃんと「いただきます」「ごちそうさまでした」が言える人でありたい!
わかる!でも「おそまつさまでした」は最近あまり言われない表現となりつつあるかも!
3.食前食後の祈りの由来
次に食前食後の祈りの由来を見ていきましょう。
世界の国々の中には食前食後に祈りを捧げる国もあるとされています。食事に祈りを捧げることが常識とされる国もあり、宗教に敬虔な方が暮らす国では食卓を囲みながら手を合わせることも珍しくないです。
- 作り手:「召し上がれ」
- 食前:祈りを捧げる
- 食後:感想を伝える
外国では作り手が料理を提供して「召し上がれ」と言ってからいただくのが作法です。それに対して食前に祈りを捧げたり、食後に感想を伝えたりして一連の食事が終了となります。
食前食後の祈りは宗教の観点から重視されており、外国では崇拝している神様や血肉となる食材への感謝として祈るのが礼儀です。その他、食べ物や飲み物という天からの恵みに対して祈ることもあります。
3-1.祈りを捧げる由来
キリスト教などの敬虔なクリスチャンは食前食後に祈るのが主流です。カトリック(神父・司祭)だけでなくプロテスタント(牧師)も食前食後に祈ります。
カトリックは普段からミサで祈る他、プロテスタントも普段から礼拝で祈るなど敬虔な信者の方ほど祈りが日常です。食前食後の祈りも特定の宗教から定着した文化の1つ……転じて、庶民の間でも食事に祈りを捧げるようになったと言われています。
3-2.感想を伝える由来
日本の飲食店では料理に対して店員が「美味しかったですか?」と聞くことは稀ですが、外国では食事の感想を聞かれることが珍しくありません。
欧米の飲食店ではテーブル1つに対してスタッフ1人が担当となり、食事が終わったのを見計らって感想を聞きに来ます。コーヒーやデザートの確認だったり、単にコミュニケーションの一環だったり……何かしら話しかけるのが日常です。要するに、会話を重要視する海外ならではの文化と言えるでしょう。
外国人は「召し上がれ」なども笑顔で言ってくれるから気持ち良く過ごせるね!
さすがに祈りを捧げることまではしなくて良いけど感想はきちんと伝えたい!
4.外国の祈り以外の合図
最後に外国の祈り以外の合図についてまとめます。
- 掛け声
- 乾杯
- 無言
食事の挨拶や食前食後の祈りを行わない国では「掛け声」「乾杯」「無言」など……飲食の合図も十人十色です。むしろ、何を言うでもなく料理が提供された時点で各々食べ始める国もあるからこそ、祈り以外にどのような表現方法があるのかを見ておきましょう。
4-1.掛け声
英語圏では「ご飯ができたよ」「美味しそうだね」というように掛け声をかけるだけの国があります。かしこまった挨拶や祈りはなく、ただ声をかけるだけです。
4-2.乾杯
世界には乾杯を飲食の合図とする国も。毎日3食ごとに祈るのは骨が折れるからこそ、来賓を招く食事会をはじめ、ホームパーティーなどでは乾杯のみで済ませることが珍しくありません。
4-3.無言
現代には食べ物や飲み物が出されたら無言で口に運ぶ人も多いです。無言で食べて無言で飲んで無言で終えるという独自の風習を持つ人もいるなど、食文化は国だけでなく人によっても千差万別であることがわかります。
最近は日本にも「いただきます」「ごちそうさまでした」「おそまつさまでした」を言わない人も少なくありません。
個人的には食への感謝という意味でちゃんと言いたい!
食に対する礼儀作法を忘れない人でいたいよね!
5.まとめ
今回は海外旅行の食事の挨拶は日本だけなのか、食事の挨拶の語源・食前食後の祈りの由来をまとめました。
海外旅行に限らず、食事の挨拶は日本特有の文化です。日本では生産者や料理人など作ってくれた人への感謝として挨拶するのですが、外国では崇拝している神様や血肉となる食材への感謝として祈るのが礼儀作法されています。どちらも「食への感謝」が込められたものと言えるでしょう。
外国では簡単な掛け声や乾杯が飲食の合図となったり無言で済ませたりするなど、絶対に挨拶や祈りが必要なわけではありませんが、食への感謝を忘れないためにも手を合わせる食文化は大事にしていきたいところです。