エジプトで世界遺産創立のきっかけとなったヌビア遺跡、それがアブシンベル神殿です。そこは太陽神ラーを祀るラムセス2世の大神殿と女神ハトホルを祀るネフェルタリの小神殿から成る世界遺産で、古代エジプトを語る上で欠かせない物語が刻まれた観光スポットです。
今回はエジプトにあるアブシンベル神殿の観光情報をまとめます。ここでは概要・予算・時間・場所・気候・服装・治安・注意点の他、実際に訪れた管理人が厳選した見どころも紹介します。記事の最後には体験談もあるので、ぜひ海外旅行の計画にお役立てください。
アブシンベル神殿がなかったら世界遺産という概念すら存在しなかった!
この記事では「エジプトにあるアブシンベル神殿の観光情報」「大神殿や小神殿の見どころ」をまとめるよ!
1.アブシンベル神殿の概要
まずはアブシンベル神殿の概要を見ていきましょう。
- 国:エジプト
- 地域:アスワン
- 特徴:世界遺産/遺跡
- 目玉:大神殿/小神殿
- 方法:個人/ツアー
- おすすめ度:
アブシンベル神殿はナイル川の上流、ヌビア地方に残る遺跡群の中でも突出した規模を誇る岩窟神殿です。そこは大神殿と小神殿が仲睦まじく寄り添う場所で、古代文明を象徴とする座像・立像・壁画・レリーフが現存する観光スポットとなっています。
ここは紀元前1250年~1300年頃、新王国時代第19王朝のラムセス2世が建設した神殿です。現存する2つの遺跡は国王の大神殿と王妃の小神殿から成り、それぞれ太陽神ラーと女神ハトホルが祀られています。この手のヌビア神殿は古代エジプト文明の最高傑作と称され、王の権威を揺るぎないものとしています。
ちなみに、神殿はずっと砂に埋もれていたものの1813年に旅行家ヨハン・ルートヴィヒ・ブルクハルトが小壁を発見し、さらに1817年に探検家ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニが出入口を発掘したことでその全容が明らかになったとのこと。その後、1979年に「アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」として世界遺産登録され、現在に至ります。
ただ、アブシンベル神殿が世界遺産に登録されるまでには紆余曲折あり、この遺跡の存在が世界遺産という概念を生むきっかけとなったのだとか。
遡ること1960年代、アスワンハイダムの建設計画により周辺の遺跡が湖底に沈むという危機が訪れます。その節、国際連合教育科学文化機関のユネスコが救済活動を行い、世界各国から約360万ドルという資金を集めて神殿の引っ越しを実現させました。遺跡は数年かけて分割され、従来よりも約60m高い山かつナイル川から約210m離れた丘に移動させられました。この移設により神殿は守られたのでした。
この出来事がきっかけとなり1972年に世界遺産条約が発足、1979年にはアブシンベル神殿も世界文化遺産に登録されました。まさにアブシンベル神殿そのものが世界遺産の生みの親と言える存在なのです。
エジプトを訪れるならアブシンベル神殿は外せないね!
カイロを拠点にするなら個人で行くのもツアーで行くのもおすすめだよ!
2.アブシンベル神殿の観光情報
次にアブシンベル神殿の観光情報を見ていきましょう。
2-1.予算
- 個人:数千円~1万円
- ツアー:1万円~3万円
- 予算総額:15万円~45万円
個人は自分での手配、ツアーは旅行会社での代行、予算総額はエジプト旅行全体(移動費・宿泊費・飲食費・観光費)にかかる目安となります。入場料は変動するので直近の情報を調べておくと安心です。
2-2.時間
- 営業時間:5時00分~18時00分(季節で変動あり)
- 所要時間:1時間~2時間
- 必要期間:7日~15日
営業時間は開店から閉店、所要時間は到着から出発、必要期間は出国から帰国までにかかる目安となります。
2-3.場所
- 場所:エジプト/アスワン
- 住所:Abu Simbel, Aswan Governorate 1211501, Egypt
- 行き方:電車/バス/タクシー/レンタカー/ツアー
- 電車:13時間~13時間30分
- バス:13時間~13時間30分
- レンタカー:10時間~10時間30分
- バス:3時間30分~4時間
- タクシー:3時間30分~4時間
- レンタカー:3時間30分~4時間
場所と住所は所在地の目安となります。行き方は「カイロ⇒アブシンベル神殿」への一例であり、他の方法でもアクセスできます。直接向かうなら飛行機もしくは現地発着のツアーがおすすめです。
2-4.気候
- 1月~3月:やや暑くて晴れやすい気候
- 4月~6月:暑くて晴れやすい気候
- 7月~9月:暑くて晴れやすい気候
- 10月~12月:やや暑くて晴れやすい気候
- ベストシーズン:12月/1月~2月
平均 | 最高気温 | 最低気温 | 降水量 |
1月 | 23℃ | 10℃ | 10mm |
2月 | 26℃ | 12℃ | 0mm |
3月 | 30℃ | 15℃ | 10mm |
4月 | 36℃ | 20℃ | 5mm |
5月 | 40℃ | 24℃ | 5mm |
6月 | 42℃ | 27℃ | 0mm |
7月 | 42℃ | 28℃ | 0mm |
8月 | 42℃ | 28℃ | 0mm |
9月 | 40℃ | 25℃ | 0mm |
10月 | 36℃ | 22℃ | 10mm |
11月 | 30℃ | 16℃ | 5mm |
12月 | 25℃ | 12℃ | 0mm |
2-5.服装
- 1月~3月:体温調節できる服装
- 4月~6月:薄手の服装
- 7月~9月:薄手の服装
- 10月~12月:体温調節できる服装
- 持ち物:歩きやすい靴
2-6.治安
- やや悪い
エジプトは総じて治安が悪く、旅の拠点となるカイロも治安不良です。
2-7.注意点
- 事前の勉強
- 拠点からの立地
- 遺跡の保存状態
- 遺跡への接触
2-7-1.事前の勉強
アブシンベル神殿は事前に勉強しないと魅力が半減してしまうかもしれません。逆に古代エジプトに関する情報を頭に入れておくことで遺跡に秘められたドラマも見えてくるため、背景を学んでから訪れてみてください。
2-7-2.拠点からの立地
アブシンベル神殿は日帰りでの観光は厳しいです。カイロから片道13時間30分~17時間30分ほど、往復27時間~35時間ほどかかります。観光時間を含めると1日~2日はかかるので、余裕のある日程を組みましょう。
2-7-3.遺跡の保存状態
アブシンベル神殿は遺跡の保存状態が完璧ではありません。時代の流れで失われてしまった部分もある他、雑な発掘作業で壊されてしまった部分もあります。そのため、完全な状態で保管されているわけではないことを念頭に置いておいてください。
2-7-4.遺跡への接触
アブシンベル神殿は希少な遺跡が残っているため、遺跡への接触には気を付けたいです。遺跡内には貴重な歴史や文化を紐解く遺物も収蔵されており、古代遺跡の財宝や出土品も展示されています。当然ながら許可なく触れたり傷つけたりしてはいけません。
観光情報は変更となる場合があることを加味しておきたいね。
Googleマップの口コミを参考にするのもおすすめかも!
3.アブシンベル神殿の見どころ
ここからはアブシンベル神殿の見どころをまとめます。
3-1.大神殿
おすすめ度:
太陽神ラーを祀る神殿。
3-2.ラムセス2世像
おすすめ度:
4体の国王の座像。
3-3.光の奇跡
おすすめ度:
1年に2回の来光。
3-4.小神殿
おすすめ度:
女神ハトホルを祀る神殿。
3-5.ネフェルタリ像
おすすめ度:
2体の王妃の立像。
アブシンベル神殿は大神殿やラムセス2世像、光の奇跡、小神殿やネフェルタリ像など見どころ満載です。
その最大の見どころは世界遺産創設の背景にあります。アブシンベル神殿は世界遺産を語る上で欠かせない場所です。なぜなら、その存在そのものが世界遺産創立のきっかけとなった神殿だからです。まさに世界遺産好きなら一度は訪れるべき聖地と言えるでしょう。
それだけでなく太陽神ラーを祀るラムセス2世の大神殿と女神ハトホルを祀るネフェルタリの小神殿も必見。どちらもヌビア遺跡の傑作と称されます!
大神殿の出入口には約20mに及ぶ4体のラムセス2世像、その足元には家族の像が並んでいます。大神殿は太陽神ラーとラムセス2世に捧げられたもので、その幅は約38m、高さは約33mと巨大。神殿内にはプタハ神をはじめアメンラー神やラーホルアクティ神、ラムセス2世の像がある他、国王の業績や聖船の儀式を描いた壁画も残されています。さらに北の壁にはカディシュの戦い、南の壁にはシリア・リビア・ヌビアとの戦いを描いた壁画も残されているのだとか。
小神殿の出入口には約10mに及ぶ4体のラムセス2世像と2体のネフェルタリ像、その脇には王子と王女の像が並んでいます。小神殿は女神ハトホルとネフェルタリに捧げられたもので、神殿内にはネフェルタリの戴冠式やパピルスを捧げる姿などを描いたレリーフが残されています。一部当時の彩色が残るレリーフもあるなど、世界的に見ても貴重な遺跡と言えるでしょう。
他にも1年に2回だけ差し込む光の奇跡も見逃せません。
アブシンベル神殿は毎年10月22日・2月22日の年2回のみ神殿内に光が差し込み、奥に鎮座する4体の像のうち冥界神プタハを除いた3体が明るく照らされます。この日はそれぞれ国王の誕生日・即位日とされ、古代エジプトにおける最も重要な1日となります。現在では翌日にこの現象が見られ、盛大な太陽祭が開かれるのだとか。
アブシンベル神殿では大神殿とラムセス2世像、光の奇跡、小神殿とネフェルタリ像が目玉!
個人的には1年に2回しか見られない光の奇跡がおすすめ!
4.アブシンベル神殿の体験談
最後に管理人が2017年11月に訪れたアブシンベル神殿の体験談を記しておきます。等身大の海外旅行記としてお楽しみください。
アブシンベル神殿に到着!群青色のナセル湖が眩しい……けど、そんなものには目もくれず一目散に“原始の遺跡”へ!
……この道の先に世界遺産創立のきっかけとなった遺跡があるんだね。
そう、ここはすべての世界遺産の生みの親と言っても過言ではない場所。
緊張感にも似た興奮が全身を駆け抜けて……もう“鳥肌総立ち状態”だよ。
もともとスタンディングオベーションってくらい全身鳥肌でしょうに!
……そうだけど!その鳥肌がさらにサブイボになるってこと!
ゆっくりとその姿を現す大神殿、その迫力に思わず心臓が震える。
……期待で胸が膨らみすぎて自慢の鳩胸が爆発しちゃいそう。
スフィンクスがびっくりしてひっくり返るくらい猫背の僕も思わずそっくり返りそうになるよ。
砂に埋もれていた夢がまた1つ叶う……そう思うとつい駆け足になっちゃうね。
……こ、これがかの太陽神ラーを祀るアブシンベル大神殿か。
エジプトで絶大な力を持っていたラムセス2世の像が放つ威圧感……痺れる!
4体の巨像が鎮座してるけど、これ全部ラムセス2世の像ってこと?
そうそう。この像は青年期から壮年期までを4つの年代に分けて、その権威を表現したものなのだとか。
左から二番目の像は上半身が倒壊したまま放置されてるみたいだけど。
あれは巨像完成の7年後に発生した大地震の影響で崩落しちゃったんだってさ。
……なんで修復せずにそのまま放置されているんだろう。
ガイドさん曰く発見当時の状態を維持するためにあえてそのままにしてるんだとか。
ここが発見された当初、遺跡の大部分(4分の3)は砂漠の砂に埋もれてたんだってね。
発掘した当時の考古学者はその巨大な神殿に腰を抜かしたに違いない。
ちなみに、遺跡の中には金銀財宝が何1つ残ってなかったそうな。
強欲な墓荒らしが神殿の遺物を洗いざらい持ち去っちゃったって話よ。
それにしてもこの形容しがたい風格は何だろう。相対するだけでその神々しさに心臓が握り潰されそうになる。
ここでは罰当たりなことだけはしちゃダメ……本能がそう言ってる!
こちらが大神殿の内部。原則撮影禁止だけど外部からならOKとのこと。
出入口にいる守衛さんに聞いたら「チップくれるならOK」ってことだったよ。
チップさえ払えばなんとかなるのがエジプトのわかりやすいところだね!笑
神殿によっては別途撮影料のかかるところもあるから許可を取るのが安心かも。
大列柱室を覗くとオシリス神の姿を模した8体のラムセス2世の立像が!
奥にはプタハ神をはじめアメン・ラー神やラー・ホルアクティ神の像もあるよ!
さらには神格化されたラムセス2世の座像まである……まさにアブシンベル神殿はラムセスのオンパレード。
ある種の執念を感じさせるね……もしかしたらラムセス2世は自己顕示欲の塊だったのかも!笑
壁には国王の業績や聖船の儀式など古代エジプトを物語るシーンが残されてる。
レリーフと呼ばれる壁画には遠征での戦闘の様子も彫られてるとか。
こうやって見てみると古代の神殿は自身の権力を永遠に誇示する役目もあったのかもしれないね。
北の壁と南の壁にはそれぞれ勇敢に戦う国王の姿も描かれてるよ。
それほど古代エジプトでは自分の威厳を示す必要があったのかも……それこそ本物の神様みたいに。
ラムセス2世には太古の世界とは思えない逸話が数多く残ってるよ。
もう十二分に人間離れした人だったということは十分わかったけど、他にも何かあるの?
当時の彼は180cmもの長身で“征服王”や“建築王”としても名を馳せたのだとか。
20代で即位してから70年近く治世を保ったという仰天エピソードも耳にするよね。
それだけじゃなくて100人以上の子孫を作り90歳前後まで生きたって話もあるよ。
……もう国王とか神様とかの次元ではなく“命を象徴する存在”そのものだね。
古代エジプトで最も有名なファラオだからね。現地では今も揺るぎない絶対的英雄なんだよ。
……ただ、どうして彼は圧倒的な功績の数々を岩盤に刻んだんだろう。
パピルスなどの華奢な紙よりも岩石という頑丈なキャンパスを選んだんじゃない?
確かに岩なら幾星霜の月日……それこそ何百年何千年という時空を超えられる。
実際にこうして数千年後を生きる人類にも届いてるしね。これこそが正真正銘の“不朽の名作”よ。
本当にエジプトはただ歩いてるだけでロマンの濁流に飲み込まれてゆく。
あまりの感動でミイラにならないよう気をつけて……すでにここが砂漠の迷宮なのだから!
大神殿に寄り添うように佇んでいるのがこちらのアブシンベル小神殿。
これは女神ハトホルを祀る神殿でラムセス2世が王妃のために作ったものだそうで。
「火の七日間」よろしくこちらを見つめるあの巨像がネフェルタリの立像?
……うん、あれはラムセス2世の像にサンドウィッチされたネフェルタリの像。
まぁたラムセスぅ。王妃のために建造したのに自分が目立っちゃ本末転倒だよ。
ラムセス2世はエジプト最強の国王であり稀代のナルシストでもあったのかもしれないね。
でも、ガイドさん曰くレリーフに残された国王と王妃は対等な立場で描かれてるんだってさ。
それほどネフェルタリにメロメロだったのかな。特別扱いしてしまうほどに。
神殿の中に残る壁画にも、ネフェルタリの姿ばかりが描かれてるみたいだよ。
ラムセス2世も国王である前に1人の男だったってこと♡
ネフェルタリが本当に幸せだったかどうかはわからないけど、愛されてたことは事実だと思う。
一説では「女神ハトホル=王妃ネフェルタリ」だったという話まであるみたい。
つまり彼女を神として祀るために作ったのがこの小神殿だったってこと?
そうなるかも。アブシンベル神殿があるここヌビアはネフェルタリの故郷だったらしいし。
ラムセス2世も粋なことするね。彼の中でネフェルタリだけは特別な人だったのかも。
古代で止まったまま砂に埋もれた2人の愛。その恥部まで刻み込まれた愛の結晶を見逃すなかれ。
アブシンベル神殿は古代建造物としてもほぼ完璧な保存状態。歴史を知らなくても一見の価値あり。
余談だけど、「ONE PIECE」に登場するビビもネフェルタリの名前から来てるみたいよ。
……エジプト、最高。このままロマンの流砂に飲まれて死んでもいい。
……ってそんなこと考えてる間に「ぬらぁ」っと行商人たちが集まってきたよ!
ここにも現れたな!観光地とあらばなりふり構わず押し寄せる超強引集団め!
これも彼らの生業だから文句言えないけど、さすがに辟易してくるね!笑
エジプトの物売りや客引きのアグレッシブさったらない。
まるで10年ぶりに旧友と再会したかのような満面の笑みで話しかけてくるんだもの。
いつの間にか商売とか関係なく仲良くなってしまうほど、怒涛のゼロ距離接客が始まる!
もしかすると、彼らは「日本人は押しに弱い」ってことを知っているのかもね。
ただ彼らに1つだけ伝えたい……店を構えて待ってるだけでいいってことを!
そうとも知らず、彼らは珍妙な日本語でひたすら呼び込みを続けているのであった……めでたしめでたし。
5.まとめ
今回はエジプトにあるアブシンベル神殿の観光情報、大神殿や小神殿の見どころをまとめました。
海外旅行でエジプトを訪れるならアブシンベル神殿がおすすめです。中でも大神殿や小神殿は見どころ満載なので、機会があればぜひ訪れてみてください。